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ケミカルリサイクルとは?

こちらのページでは、プラスチックのリサイクル方法のひとつである「ケミカルリサイクル」についてご紹介しています。どのようなリサイクル方法なのか、また他のリサイクル方法(サーマルリサイクルやマテリアルリサイクル)との違いなどについてまとめています。

現在、プラスチックのリサイクルにおいてはさまざまな取り組みが行われています。こちらの記事を参考に、ぜひリサイクルに関する知識を深めて「正しいプラスチックとの関わり方」を学んでいきましょう。

ケミカルリサイクルとは?

ケミカルリサイクルとは、ISO15270では「フィードストックリサイクル」と呼ばれているリサイクル方法です。廃棄物に対して化学的な処理を行うことによって分解を行い、原料として再利用しますが、

  • 油化
  • ガス化
  • コークス炉化学原料化
  • 高炉原料化
  • 原料・モノマー化

といった5つの方法があります。ケミカルリサイクルは、廃プラスチックが汚染していたり異物が含まれていたとしてもリサイクルできる点が大きな特徴といえます。

またケミカルリサイクルのほかにも、プラスチックのリサイクルの種類には「サーマルリサイクル」「マテリアルリサイクル」といった方法もあります。

サーマルリサイクルは、廃プラスチックを固形燃料にしたり、焼却する際に発生する熱エネルギーを回収して利用する方法です。回収された熱エネルギーは、発電や温水プールなどに活用されます。

またマテリアルリサイクルとは、廃棄されたプラスチックをプラスチック製品の原料として再利用する方法です。飲料用ボトルやパレット、文具などさまざまなものに再利用されていますが、廃棄物を加工して再度利用するという特性上、廃棄物の状態によっては再利用できないケースもあります。

分類 リサイクル方法
ケミカルリサイクル 廃プラスチックに化学的な処理を行って分解し、原料として再利用する
サーマルリサイクル 廃プラスチックを固形燃料にする・焼却などを行い、熱エネルギーを回収して再利用する
マテリアルリサイクル 粉砕などを行った廃プラスチックを、原料としてプラスチック製品に再生する

ケミカルリサイクルのメリット

ケミカルリサイクルの場合、下記のようなメリットがあるとされています。

  • 異なる種類のプラスチックが混ざっていてもリサイクルが可能
  • CO2の排出量削減が期待できる
  • 天然資源の節約につなげられる

廃プラスチックの中には、汚染されているものや異物が混入しているケースがありますが、ケミカルリサイクルの場合は化学的な分解や高熱での熱分解を行うことから、異なる種類のプラスチックが混在しているケースでもリサイクルが行えます

また、手法によって違いはあるもののCO2の削減効果が期待できる点や、廃プラスチックを水素やメタノールなど化学工業利用可能な素材として再利用が行えるため、今まで使ってきた天然資源の節約にもつなげられるといった点もメリットとして挙げられています。

ケミカルリサイクルの課題点

上記のようにさまざまなメリットがある反面、ケミカルリサイクルにも課題とされている部分もあります。

  • コストが高い
  • プラスチック添加物の処理に関する問題

まず、ケミカルリサイクルを行うには必要なプロセスや設備が複雑となるため、設備投資にコストがかかる点が課題として挙げられています。

さらに、ケミカルリサイクルを行う施設は大規模な施設となるために都市から離れた場所に作られることが想定され、廃プラスチックをリサイクル施設まで運ぶ際の輸送コストが高額になるといった点も課題といえます。

また、リサイクルを行うにあたってプラスチックに含まれている難燃剤や、劣化を防ぐための化学物質などをどう処理するかといった課題もあります。

例えば難燃剤が添加されているプラスチックを焼却した場合には有毒ガス(ダイオキシン等)が発生することから、適切な処理ができる設備が必要です。このようにプラスチック添加剤を処理する際に、どのように環境への配慮を行っていくかといった点も課題として挙げられています。

ケミカルリサイクルの方法

油化

プラスチック油化プラントイラストプラスチック油化プラントイラスト

油化を行う場合には、廃プラスチックを熱で分解することにより炭化水素油を得る、という方法でリサイクルを行っていきますが、この方法はケミカルリサイクルの中でもリサイクル効率が高い方法であるとされています。

ここで得られる炭化水素油はボイラー用の燃料などに使用できます。 またこちらの方法は、例えば石油化学プラントや製油所など既にある化学工業設備を有効活用できることから初期設備費用を抑えられるといったメリットもあります。

ガス化

ガス化(アンモニア製造)イラストガス化(アンモニア製造)イラスト

廃プラスチックをガスにすることにより、化学工業の原料として再利用する方法です。この方法では、プラスチックを熱で分解してガスにし、水素や一酸化炭素を回収してアンモニアなどの原料として再利用する、という流れとなります。

この方法ではプラスチックを熱と圧力によりガスに変えていくことから、大気中への二酸化炭素の放出を抑えられる点がメリットです。加えてダイオキシンも分解できるため、地球環境に配慮されたリサイクル方法といえるでしょう。

コークス炉化学原料化

コークス炉化学原料化イラストコークス炉化学原料化イラスト

「コークス」とは、石炭を100℃以上の熱で蒸し焼きにして作るもので、製鉄所の高炉の燃料などに使われているものです。コークス炉化学原料化によるリサイクルを行う場合、まず細かく砕かれた廃プラスチックから鉄分や塩化ビニルを除去します。その後100℃に熱して粒状にし、石炭と混ぜてコークス炉の炭化室に入れて熱分解することにより、コークスと炭化水素油、コークス炉ガスを作れます

この方法を用いると、処理をしたプラスチックをほぼ100%エネルギーや資源として再利用できる、といったメリットが得られます。

高炉原料化

高炉原料化イラスト高炉原料化イラスト

「高炉原料化」とは、廃プラスチックを高炉の原料として再利用する方法です。製鉄所では高炉において鉄鉱石とコークスを化学反応させることにより鉄を製造していますが、廃プラスチックをコークスの代わりに使えるのではないか、といった考えから開発されたのがこの高炉原料化と呼ばれる方法です。

鉄を作り出す際に使用するコークスの原料となる原料炭は天然資源であるためにその量に限りがありますが、この高炉原料化によって原料炭の使用を節約できること、さらにCO2の排出を削減できるといった面もあります。

原料・モノマー化

化学反応を利用して廃プラスチックを分解し、元の製品原料やモノマーの状態に戻してから再度プラスチック製品を生産することで資源を節約する技術です。ちなみに「モノマー」とは、ポリマー(プラスチック)を構成する最小単位ともいえるものですが、原料化されたプラスチックは飲料用のペットボトルや繊維、シートなどに再利用できます。

まとめ

こちらの記事では、廃プラスチックを再利用する方法として活用されている「ケミカルリサイクル」について紹介してきました。プラスチックひとつでも多彩な方法でリサイクルが行われていることを初めて知った、という方も多いのではないでしょうか。

このように、現在はさまざまな方法でプラスチックを再利用する取り組みが行われている点からも、ナフサ由来のプラスチックを100%排除するのではなく、リサイクルを行いながらうまく共存していく方法を模索することも大切です。そしてひとりひとりがリサイクルについての意識を持つことにより、地球にやさしい社会を作っていけるといえるでしょう。

ぜひこちらの記事などを参考にリサイクルに関する知識を取り入れながら、自分にできることを探してみてはいかがでしょうか。

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