サーキュラーエコノミーとは
SDGsに関連する取り組みが進められ、環境問題の深刻度や注目度が増す昨今においては、さまざまな専門用語が取り上げられる機会が多くなっています。ここではその中でも「サーキュラーエコノミー」という言葉について解説していきます。
循環経済とも呼ばれるサーキュラーエコノミーとは
まずは、「サーキュラーエコノミー」という言葉の意味について解説します。 これは「循環経済」とも呼ばれており、以前より存在していた「3R」という概念に加え、資源投入量や消費量を抑えつつストックを有効活用しながら、サービス化などを通じて付加価値を生み出す経済活動のことをいいます。
2015年12月にEUで政策パッケージが公表されて以降世界的に広がった概念であり、資源としての価値を可能な限り長く保全・維持することで廃棄物の発生を最小限化するための経済システムです。
また、これまで「廃棄物」とみなされていたものを「資源」としてとらえることにより、物理的にというよりも概念的に廃棄物の発生を抑制するとともに、一方通行でモノを使っていた「直線経済」から脱却することも目指されています。
サーキュラーエコノミーが求められる背景
資源不足の懸念
新興国の急速な経済発展という背景もあり、国際的に資源需要が高まっています。その急速な需要増加に供給が追い付くことは当然難しく、何らかの対策・対応が求められることとなります。また、その状況を踏まえると将来的に資源価格が大きく高騰するであろうこと、並びに希少金属を含むクリティカルメタルの安定確保が困難になる恐れがあるといわれています。これらの背景を踏まえ、サーキュラーエコノミーが求められています。
廃棄物処理システムの機能不全の懸念
アジア諸国では廃物輸入規制がかけられており、従来輸出してきたような古紙・廃プラスチック・廃電線といった廃棄物が国内に滞留してしまい、国内の処理システムが逼迫しています。廃棄物を原料として受け入れているセメントなどの産業についても国内の生産規模は縮小しており、現状の循環システムを中長期的に維持することも難しいと言われています。そのため国内の資源循環を支える産業を再評価することと、資源循環システムを見直すことは必要であるといわれています。
サーキュラーエコノミーに対する日本国内の動向
世界的な著しい人口増加も相まって注目が高まっているサーキュラーエコノミーですが、我が国日本においては2018年6月に「第四次循環型社会形成推進基本計画」が定められ、環境的側面や経済的側面、社会的側面を統合的に向上させる「持続可能な社会づくりとの統合的取組」を含めた7つの取り組みについて方向性が示されました。
そしてその取組指標としては「循環型社会ビジネスの市場規模」が設定されるなど、数値目標値とともに関係主体の具体的な取り組みが示されています。そして2020年3月には「サーキュラー・エコノミー・アクションプラン」の公表、 2020年5月には「循環経済ビジョン 2020」の策定がなされ、社会全体としてサーキュラーエコノミーへの移行を促しているような状況です。そしてさらに2022年4月には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行されており、環境問題に関する取り組みがより加速しています。
サーキュラーエコノミー実現のための課題
対応領域が広範にわたる
サーキュラーエコノミーにおいて重要なことは、「原料を調達する段階から再利用することを前提とする」「従来廃棄されていたものも原料として再活用する」といった意識です。単一的な視点ではこれらの意識を反映することはなかなかできないので、関わるプロセスも含めて対応領域を広範囲に広げていく必要があります。
シェアリングエコノミーの普及と消費者の消費行動の変容
最近では古物商のようなビジネスや個人で売買できる通販プラットフォームの普及などにより「使い古したものを捨てる」以外の選択肢が増えてきています。これらのような消費行動の変容に加え、個人が保有して遊休となっているようなモノを活用することで、「何でもかんでも新品を買う」という行動を抑制する「シェアリングエコノミー」という考え方の普及も求められます。
サプライチェーン全体の取り組みの可視化・透明化
環境対策はCSR活動の一環として求められることがあり、企業単体として取り組むケースも増えてきています。しかし本当の環境対策は1企業の個別最適ではなく社会全体の全体最適が求められるものですから、実態が伴っていない名前だけの「サーキュラーエコノミー」ではなくサプライチェーン全体で効率の良い取り組みになるよう可視化・透明化を図る必要があります。
まとめ
ここで取り上げたプラスチックに関わる環境問題への対策は、ただ闇雲に使用量を減らす、という単純な発想で解決するものではなく、多角的な観点から社会全体として取り組む必要があります。
世界的に問題視されている環境問題だからこそ企業イメージの向上という目的も含め取り組むことが増えていますが、問題解決にはより責任感を持った「本質的」な取り組みが求められています。
それらの取り組むべき課題を解決する選択肢の一つとしてここで紹介した「サーキュラーエコノミー」があり、物理的な排出抑制だけではなく概念的に廃棄物の発生を抑えることで資源の効率化に取り組むことができます。
時代の進みや技術の発展とともに環境対策としてできることもどんどん増えてきており、従来よりある「リサイクル・リユース・リデュース」の3Rという概念よりも一層環境に貢献できる手段となり得るでしょう。
このような環境問題にも取り組みながら私たち人間の豊かな生活を維持・発展させていくためには、ナフサ由来のプラスチックをただいたずらに排除してしまうのではなく、プラスチックという資源と共存していく方法も模索しながら、地球に優しい社会をともに作っていく必要があります。