プラスチックを取り巻く国内外の状況
日本企業が脱プラスチックを行っていくうえで、これからどのようなことを行っていけばいいのか、日本をはじめ、プラスチックに対する世界各国の取り組みについてまとめて紹介しています。
脱プラスチックの各国の現状
日本
環境省のデータによると、2019年の日本の廃プラスチックの有効利用率は85%。リサイクル方法別の内訳としては、廃棄されたプラスチック製品を加熱して新しい製品を作るマテリアルリサイクルが22%、化学的な処理によって新しいプラスチックを合成するケミカルリサイクルが3%、廃棄物を焼却することでリサイクルするサーマルリサイクルが60%となっています。
一見するとリサイクル率が高いように見受けられますが、日本で60%のリサイクル率を誇るサーマルリサイクルは海外においてはリサイクルの一種として認められていないため、日本のプラスチックリサイクルの実態はほとんど焼却しているだけとなっており、諸外国に比べると低いものとなっています。
アメリカ
2021年11月に国家リサイクル戦略を制定し、国全体としてリサイクル可能な商品を増やし、リサイクル過程での環境負荷を減らすことを目指しています。
たとえば、プラスチック製の買い物袋やプラスチックストローやマドラーといったカトラリーの使用禁止や、再生プラスチックの比率を記載することが義務付けられていたり、マイクロプラスチックの一種であるマイクロビーズを削減する取り組みなどが行われています。
カナダ
2022年12月に環境に有害となる特定使い捨てプラスチックの禁止規制案を発表しています。10年間でごみ袋100万枚に相当する2万3,000トン以上のプラスチックの環境流出を防ぐことができると推定されています。
また、この条例によってリサイクルせずに捨てられるプラスチック製のレジ袋、カトラリー類、食料や飲料用容器、缶ビールなどを束ねるリングキャリア、マドラー、ストローの6品目の製造と輸入が禁止されています。
イギリス
脱プラスチックの先進国ともいわれているイギリス。2015年からレジ袋の有料化をスタートさせ、2018年にはマイクロビーズ(マイクロプラスチック)の使用が禁止されています。
一般市民だけでなく王室もプラスチックの使用を禁止するなど、多くの団体が積極的にプラスチック問題に取り組んでいます。2020年10月にはリサイクルが難しいプラ製のストローやマドラーなどの流通を禁じています。
オランダ
世界の脱プラをリードする画期的な政策を行っているオランダでは、プラスチックゴミでつくる水上公園やリサイクルプラスチックでできた自転車専用道路、世界初となる「プラスチックフリー」のスーパーができるなど世界から注目を集めています。
脱プラで世界に遅れをとっている日本
OECD(経済協力開発機構)のデータによると、日本はごみの焼却割合が欧米に比べて高く80%近くを占めています(OECDのヨーロッパ全体の平均25%と比べると圧倒的です)。日本のごみ処理方法の割合で見ると、焼却が79.4%、リサイクル率は19.6%程度しかありません。
脱炭素社会が叫ばれるなかで取り組まなければいけないのは、循環型の社会構築のための取り組みでしょう。廃棄物を減らす、リサイクルに繋がる商品を作る、燃やしても環境に影響の出ない商品を開発するなどの取り組みが必要です。
当メディアでは、脱プラやSDGsが叫ばれる前からバイオマス原料を使用した混錬に携わり押出機を販売しているメーカー、シーティーイーに取材をしています。
【プロの目で読み解く】日本はリサイクル活動が遅れているか?
伊藤勝人
欧州では、サーマルリサイクルはリサイクルとして取り入れていません。多くの国が環境問題に大きく取り組んでいるため、たとえばノルウェーなどは欧州規格で再利用率が約45%と高水準です。また、使う責任と作る責任を両方で考えており、生産側にもリサイクルできる原料でなければ市場に出していけないなどの規制が設けられています。
一方、日本はプラスチックの再利用率を85%(2019年)のうちサーマルリサイクルの割合が60%。欧州規格になった際には日本は19.6%で、取り組みに大きな差があります。日本がこれから向かっていかないといけないのは生産量を減らし脱プラスチックを目指すのではなく、アップサイクルやサステナブルに使える循環型にもっと力を入れていくべきでしょう。
そのなかでバイオマスや生分解性樹脂というのは人類の循環(分子レベルまでの分解により自然にかえる)という点で、サステナブルな社会につながると考えます。本質的になにが地球にとって正しく、優しいことかをしっかり考え企業活動を行っていくことが必要だと思います。
脱プラへ、企業が最優先で考えなければいけないことは
脱プラの動きは世界中で加速しています。とはいえ、衛生的な暮らしや安全な暮らしを支えているプラスチックをなくすことは不可能です。プラスチックをなくすのではなく、処分にあたって環境にやさしいプラスチック製品を開発することが重要です。そのひとつがバイオマスプラスチックです。
バイオマスプラスチックはその特性からCO2排出を抑制し、生分解性ならコンポストや土中での生分解によりマイクロプラスチックの発生源をシャットアウトができます。
バイオマスプラスチックを使うことで環境への配慮のほか、消費者へのアピールにもつながります。バイオマスプラスチックは今後ますます利活用が求められるようになるのは間違いないでしょう。