バイオマスプラスチックのメリット・デメリット
環境にやさしいというイメージが定着しつつあるバイオマスプラスチックですが、実際にはどのようなメリットやデメリットがあるのかまとめてみました。バイオマスプラスチックの加工機器を取り扱うプラスチック樹脂メーカーの取り組みも紹介しています。
バイオマスプラスチックのメリット
温室効果ガスの削減につながる
地球温暖化の要因となっている温室効果ガスの75%以上は、二酸化炭素となっています。限りある資源で作られている石油由来のプラスチックは製造や焼却する際に大量の二酸化炭素を排出しており、大きな問題となっています。
一方で、生物由来の資源を原料としているバイオマスプラスチックは、焼却時に二酸化炭素が発生しますが、原料となっている植物の発育時に吸収していた二酸化炭素のため、二酸化炭素量が増減しません。そのカーボンニュートラルという特性によって、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を抑制してくれることが期待されています。
海洋マイクロプラスチックの削減
いま問題となっているのが、海洋マイクロプラスチック。自然に分解されずに5ミリ以下のプラスチック片として残って環境汚染につながるほか、マイクロプラスチックを魚介類が誤飲し体内に蓄積することで、それを食べる人間にも悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。
海の生き物の誤飲対策として有効なのが、バイオマスプラスチックです。原料にバイオマスを使った生分解性のプラスチックなら、生分解の性質により海洋マイクロプラスチックの発生源を絶つことに繋がります。
バイオマスプラスチックの製造や利活用は、再生不可能な資源への依存度を減らせるだけでなく、日常生活を維持しながら人間の活動が自然環境へ悪影響を与えずにプラスチックごみによる海洋汚染の改善に有効であると考えられています。
自然に還元される
廃棄時に土壌や水中の微生物の働きによって分解される性質を持っているバイオマス生分解性プラスチックは、土に埋めることで、微生物により分解されると最終的には水と二酸化炭素になり自然に還元。水と二酸化炭素は植物の育成に欠かせない要素であり、ふたたびバイオマスプラスチックの原料となる植物が育つ環境にも繋がるため、資源の循環が行われます。
一般的なプラスチックよりも大気中の有害物質を大幅に増やすことがなく、環境に被害を及ぼす原因にはならないプラスチックとしてさまざまな分野で需要が増えてきています。
バイオマスプラスチックのデメリット
すべてが生分解するわけではない
バイオマスプラスチックには非分解性のプラスチックも含まれ、海洋マイクロプラスチックの削減にすべて効果があるわけではないことを認識しておく必要があります。
CO2削減、海洋マイクロプラスチックの削減の両方に効果があるものは、2022年10月時点ではバイオマス由来生分解性プラスチックしかありません。
製造コストが高い
植物を化学素材の原料に転換するため、石油由来のプラスチックと比較すると1.5~5倍のコストがかかります。また、バイオマスプラスチック製造のための新しい設備や工場なども準備しなければならないため、導入までに莫大な費用が掛かることも懸念されています。
しかし、バイオマスプラスチックに対応した製造機器を開発しているメーカーも増えつつあり、今後、需要と生産量が増えていけばコストは下がっていくことが見込まれています。
耐熱性や強度が弱い
バイオマスプラスチックは石油由来のプラスチックとは別の構造体なので、バイオマスプラスチックで作られた製品では繰り返し使用するほどの耐久性がなく、使い捨てが前提。機能面で使用用途が制限されてしまうところが課題として挙げられていますが、石油系材料を使用せずに100%バイオマス組成で、強度や耐久性を向上させる素材も開発されはじめています。
バイオマスプラスチックのみで回収する必要がある
バイオマスプラスチックが生分解をするには、他のごみと一緒ではなく、バイオマスプラスチックでのみで処理をする必要があります。
現時点で、日本ではバイオマスプラスチックを専用に分別するルールはありません。
今後、日本がヨーロッパのように、バイオマスプラスチックの力を最大限に引き出すには、バイオマスプラスチックはバイオマスプラスチックでのみ回収できる仕組みを作ることが求められます。
バイオマスプラスチックは環境へのメリットが大きい
化石燃料由来のプラスチックは、衛生的な暮らしや安全な暮らしを支える欠かせないものです。しかし、その廃棄において地球の環境に悪影響を及ぼしているのも事実で、だからこそCO2排出を削減でき、マイクロプラスチックの抑止に繋がるバイオマスプラスチックが注目を浴びています。
バイオマスプラスチックを採用するにあたりネックになるのが高コストや耐久性の弱さでしょう。そのデメリットの解消にもつながるバイオマスプラスチックを製造する押出機を扱うシーティーイーに解説いただきます。
【プロの目で読み解く】
バイオマスプラスチックの課題とどう向き合うべきか
伊藤勝人
バイオマスプラスチックはまだまだ、発展途上の段階です。
現在の大きな課題は、2つあると考えます。1つ目は、バイオマスプラスチックにはまだ石油由来のプラスチックほど物性が良くないということです。これは今後の研究開発に期待を寄せております。
2つ目はバイオマスプラスチックをどのように回収していくかが大きなテーマになってくると考えます。
バイオマスプラスチックを今までと同じやり方で回収し燃やしていたのではなにも意味がなく、バイオマスプラスチックの特性を生かし、土に返すことやバイオマスプラスチックはバイオマスプラスチックで回収するなどの戦略を、一企業だけではなく国・自治体と連携して考えていく必要があると考えます。
弊社が提供している押出機はガス抜けが良い機構に作られているため、樹脂の事前乾燥が不要で、弊社独自の混練機構により樹脂を痛めつけずに練ることができる製品となっているので、高濃度フィラーのコンパウンドを実現できます。
シーティーイーとは?
合成樹脂(プラスチック)を成型・加工する押出機を設計から製造まで手掛けている機械メーカー。埼玉県上尾市に本社と工場があり、多彩な押出機関連装置から周辺機器・コンパウンドシステムエンジニアリングまで、幅広い技術を供給しています。
設計や製造だけでなく自社でサポートから保守、メンテナンスまで一貫して行っており、アフターサービスも充実。高品質な製品をリーズナブルな価格帯で提供しています。
シーティーイーの押出機とは?
高速回転の連続多列ロータースクリューを備えたことで、高い押出能力を持っており、単軸で押出すため過混練がなく従来の2軸押出機より樹脂温度が10~20℃低いのが特長です。
また、セグメント化されたフィラー濃度70%以上可能なバンバリミキサタイプの複数の高速ロータによって、高い混練性と可塑化能力が高まり押出量がアップ。2軸混練機と単軸押出機を同軸化しているので、省エネルギー・省スペースを実現しています。