バイオマスプラスチックが進む背景と今後の課題
1980年頃から作られていたバイオマスプラスチックが、近年急速に普及するようになった理由についてまとめました。バイオマスプラスチックが抱えている問題点や課題についても紹介しています。
バイオマスプラスチックが進む背景
CO2濃度がどんどん高まり、気候変動が加速しているため
世界のプラスチック生産量は2020年に3億6,700万トンを超え、2040年までには2倍になるとも予想されています。プラスチックはさまざまなものに活用されており、生活と切り離せないものです。
しかし、そのうち化石燃料で作られたプラスチック廃棄の燃焼処理が、温暖化ガスの発生原因のひとつとなっています。1770年から1870年ごろは大気中のCO2濃度は280ppmだったものの、2019年には410ppmに上昇、2100年には500~1000ppmまで上昇すると予測されています。
2100年における日本の気候変動予測では、年の平均気温が約4.5度上昇、猛烈な勢いの台風の頻度が増加など、さまざま予測がでています。こうした状況に歯止めをかけるために、バイオマスプラスチックの利活用が推進されました。
海洋に流出したプラスチックによる海洋生態系への悪影響
海洋プラスチックについては、その約50%が漁網やルアー、ブイなど漁業に関連している漁具が適切に破棄されていないことなどを原因として浮かんでいるといわれています。
しかし、我々が生活の中で用いているプラスチックについても、見逃すことはできません。
化石燃料由来のプラスチック製品は強度があり丈夫なため、適切に処分されなかったプラスチック製の容器やペットボトル等、陸地で発生したごみが河川から海に流れ着き、世界全体で少なくても年間800万トンのプラスチックごみが新たに海に流出しています。
この状態が続くと、2050年には海洋中に蓄積しているプラスチックごみが魚の重量を超えると試算されており、地球規模の問題となっています。
すでに海洋プラスチックは海の生態系に大きな影響をもたらしており、海鳥の約90%がプラスチックごみを摂取しているとの報告(※)もあります。性質上、海を漂流・漂着するプラスチックごみは環境中に半永久的に残り続けるため、一刻も早い対策が必要な状況となっています。
我々がプラスチックを正しく処分しないことで、風などで飛ばされたレジ袋やペットボトルといったプラスチック製品が自然界に流出することで5ミリ以下のマイクロプラスチック化し、それを摂取する動物や海洋生物が被害に遭い、自然環境が破壊される要因となっています。プラスチックが環境に与える負荷を最小限にするために、再生可能な植物を原料としているバイオマスプラスチックに注目が集まったのです。
バイオマスプラスチックの課題・問題点
では、バイオマスプラスチックは万能かと言うと課題もあります。その点を掘り下げていきます。
強度や耐熱性が低い
バイオマスプラスチックは全般的に耐熱性が低く、強度も化石資源由来と比較すると弱い傾向にあります。大きな力がかかる製品や、長期間の寿命が求められるような製品においては検討が必要になります。
すべてが生分解するわけではない
バイオマスプラスチックは化石資源の消費削減とCO2排出の抑制が期待できます。ただし、バイオマス由来の非生分解性プラスチックにおいては、分解しないためマイクロプラスチック化を防ぐことができません。
バイオマスプラスチックのみで処分をする必要がある
バイオマスプラスチックが適切に生分解されるためには、バイオマスプラスチックでのみ、処分をする必要があり、他のプラスチックごみと一緒に処分をすることができません。
現状、日本ではバイオマスプラスチックのみを分別する仕組みがないので、バイオマスプラスチックのポテンシャルを最大に活かす機会が限られているといえるでしょう。
バイオマスプラスチックは今後どうなっていくか?
バイオマスプラスチックは気候変動の抑制に繋がるメリットがあり、プラスチックに関わる業者の研究や開発が進んでいます。
バイオマスプラスチックは樹脂の特性が異なることから製品の製造や使用が難しく、用途が限定されてしまうという弱点もありますが、プラスチックの利便性を損なわずに生産することも実は可能です。そのカギを握るのがプラスチックをコンパウンドする機械。バイオマスプラスチックに対応した高性能な機械で製造を行うことで、環境に貢献できるうえ、価値の高いプラスチックを精製できます。バイオマスペレットを精製する押出機を開発するシーティーイーの伊藤様に、バイオマスプラスチックの課題について伺いました。
【プロの目で読み解く】バイオマスプラスチックの課題は
どう解決できるのか?
限りなく小さくする
高濃度コンパウンドが可能
伊藤勝人
バイオマスプラスチックはまだ石油由来のプラスチックほど物性が良くないのは事実です。そこを解決するひとつとしては、コンパウンドの段階で品質を上げていくことが重要だと考えています。
バイオマスペレットをつくるにあたり、押出機では樹脂の温度が上がる課題があります。樹脂の温度が上がると「劣化」が始まってしまい、それが二軸押出機の問題点にもなっています。弊社の二軸押出機は先端部分をスクリュー1本にすることで温度上昇を防ぎ、樹脂の劣化を限りなく小さくすることが可能です。そのため70%以上の高フィラー濃度のコンパウンドを実現することができます。
シーティーイーとは?
シーティーイーは、プラスチック押出機及び同付帯装置等の製造販売を行なう機器メーカーです。バイオマスプラスチックが叫ばれる前から着手しており、プラスチックと環境の共存を視野に入れて事業を推進しています。フィラー濃度70%以上可能なHTM型2軸押出機など、高い性能を備えた押出機を販売しています。
シーティーイーの押出機とは?
高速回転の連続多列ロータースクリューを備えたことで、高い押出能力を持っており、単軸で押出すため過混練がなく従来の2軸押出機より樹脂温度が10~20℃低いのが特長です。
また、セグメント化されたスフィラー濃度70%以上可能なバンバリミキサタイプの複数の高速ロータによって、高い混練性と可塑化能力が高まり押出量がアップ。2軸混練機と単軸押出機を同軸化しているので、省エネルギー・省スペースを実現しています。