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日本におけるプラスチックリサイクルの現状と展望

こちらでは日本におけるプラスチックのリサイクル事情について取り上げていきたいと思います。近年ではスーパーやコンビニエンスストアでのレジ袋有料化や、ファーストフード店でのプラスチック食器廃止などのニュースが記憶に新しいところ。もちろんそうした試みは意義のあることですが、プラスチック製品をすべてなくす、廃止するということはほぼ不可能です。

そこで重要になってくるのが、いかにプラスチックのリサイクルを推進していくかという点に他なりません。

いたずらにプラスチック製品廃絶を叫ぶのではなく、「プラスチックのリサイクル方法」を学んで、「プラスチックとの共存」を図ることこそが現実性のある対応策と言えるのではないでしょうか。

ぜひ、本ページでご紹介する内容をご一読いただき、プラスチックリサイクルに関する知識と意識を高めていただきたく思います。

目次

廃プラスチックの排出量について

報道番組やネットニュースなどでも目にする機会の多い、プラスチックゴミの増加問題。プラスチックを廃棄する量を減らさなければならない状況にあるということは、多くの方が認識されていることと思います。

しかしながら、その一方で、具体的にどの位のプラスチックゴミが出ているか、廃棄物としての排出量がどの位の数値なのかといった事までを把握されているという方は少数派ではないでしょうか。まずは、どの位のプラスチックゴミが出ているのかを確認していきましょう。

産業廃棄物の排出量

令和2年に行われた調査によると、工場や建築現場、畜産農家などから排出されるいわゆる 産業廃棄物の排出量は約386百万トン。数字で見るととてつもない量に思えますが、400百万トンを超えていた平成17年をピークに、その後は微減しながらの横ばい傾向が続いています。また産業廃棄物全体に占める廃プラスチックの割合は、意外にも2.0%にとどまっています。なお参考までに、産業廃棄物全体から見た割合としては、汚泥が44.3%、動物のふん尿が20.9%、がれき類が15.3%などとなっています。

一般廃棄物の排出量

一般家庭などからごみステーションに排出され回収された一般廃棄物は、産業廃棄物以上に減少傾向。5,500万tに近い数値を記録した平成12年度をピークに減少が続き、令和2年度は4,167万tとのこと。またそのうち、廃プラスチックが占める割合は、これまた意外にも14.8%という割合となっています。一般廃棄物全体から見ると、一番多いのは紙類で33.8%。いわゆる生ゴミにあたる厨芥類が27.9%で、プラスチック類はその次。以下に木材類やガラス類、金属類が続くといった状況になります。

世界の廃棄物排出

上記の通り、我らが日本においては、産業廃棄物・一般廃棄物の双方で排出量が減少傾向にあるのに対し、世界全体ではごみ排出量は増えているというのが実情。イギリスとドイツは日本と同じく減少傾向にあるものの、韓国、フランスなどは増加しており、とりわけアメリカ合衆国は一国で2.7億tを排出している程。また地域別では、東南アジアや南米、中東、アフリカなどで軒並み増加傾向となっています。

情報参照元URL:
https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf
https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf3.pdf

プラスチックのリサイクル方法

プラスチックのリサイクルとひと口に言っても、そのやり方はひとつではありません。現在、行われているリサイクル方法は以下の4種類となります。

メリット デメリット
マテリアルリサイクル 廃棄物を新な資源として有効活用できる。 同一素材の分別や選別に大きな手間とコストが必要。
ケミカルリサイクル 廃棄物を資源化でき、廃棄物環境負荷の軽減につながる。 非常に高度な処理が必要。プラスチックの種類によって向き・不向きがある。
サーマルリサイクル 廃棄物を燃料やエネルギーとして使うことができる。 大量の二酸化炭素発生。有毒ガスやダイオキシン発生をゼロにはできない。
オーガニックリサイクル プラスチックをCO2と水に分解できるので、環境負荷を大きく軽減できる。 生分解性を持っているプラスチックに限られ、対応できる量がまだまだ少ない

では、それぞれのリサイクル方法について、さらに詳しく見ていきましょう。

マテリアルリサイクル

廃棄されたプラスチック製品を粉砕・加熱し、再度、プラスチック製品の原料に用いるという方法になります。例えば回収された使用済ペットボトルを、作業着やユニフォームなどの原料として活用するというケースを耳にしたことがあることでしょう。また「リサイクル」と聞いて、多くの方がイメージするのは、この方式と思われます。

そもそも日本ではプラスチックの原料である石油を実に99%を輸入に依存しているというのが実情。リサイクルによって資源を有効活用できることは、大きなメリットと言えます。

一方でデメリットと言えるのは、手間とコストが大きいという点。ひと口にプラスチックと言っても、実は様々な種類があります。マテリアルリサイクルを行うには、同一の素材を用いて行うことが必須条件となっています。そのため膨大な廃プラスチックを確実に分別し、異物除去を徹底しなければなりません

ケミカルリサイクル

その名の通り、廃プラスチックを化学的に分解し、他の化学物質として再生することで有効利用するというやり方になります。プラスチック以外の物質でも行われており、例えば廃棄された食用油から石鹸を作ったり、家畜の糞尿からバイオガスを生成するなどの事例があります。

プラスチックのケミカルリサイクルとしては、製鉄所の高炉にもちいるコークスの代用品としたり、化学的にガス化して炭化水素や一酸化炭素、アンモニアや水素といった物質を取り出して活用するといった方法があります。マテリアルリサイクルと同じく、廃プラスチックを資源として再利用できるのが大きなメリットと言えます。

一方、デメリットとしては文字通り化学的な知見やノウハウが不可欠であり、非常に高度な処理技術を求められるという点。またプラスチックの種類によって向き・不向きがあり、正確な見極めも不可欠になります。

ケミカルリサイクル
について詳しく見る

サーマルリサイクル

実は日本において、最も用いられているリサイクル方法がこのサーマルリサイクルになります。日本の廃プラスチックリサイクルの6割から7割程度がこのやり方であるとされています。簡単に言えば、廃プラスチックを焼却する際に発生する熱を、温水プールや浴場、暖房、発電などに用いるというやり方であり、「ごみ発電」とも呼ばれます。

また上記のケミカルリサイクルの一種でもありますが、廃プラスチックを固形燃料に加工し、火力発電所の燃料として使用するというケースもあります。

一方、デメリットは燃焼によってCO2を発生させてしまうことは避けられない点。それゆえ欧米などでは、そもそもサーマルリサイクルはリサイクルとして認められていません。また近年では技術の進歩によって大きな改善がなされていますが、それでも有毒ガスやダイオキシンなどの発生をゼロにはできません。

オーガニックリサイクル

本サイトでも取り上げているバイオマスプラスチックや生分解性プラスチックに関わるリサイクル方法になります。生分解性プラスチックは高分子(ポリマー)と呼ばれる分子が長くつながった構造をしており、微生物の働きによりCO2と水に分解されるという特徴があります。

つまり、そうした自然に還るという特性こそが、オーガニックリサイクルということ。分解によってCO2と水になり、そこから直物の光合成を促し、糖類や酸素を生成し循環させるという理想的な循環サイクルを生み出すことができるとされています。

一方で、現状バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックの生産はまだまだ微々たるもの。今後、いかに生産量や活用分野を増やしていけるかが、課題となっています。

バイオマスプラスチックについてもっと詳しく

プラミライ編集チームより

いま世界では、効果的・効率的で持続可能なリサイクルが求められています。石油資源を原料とするプラスチックは完全なリサイクルが難しく、環境中に残り続けてしまいます。それを解消するためのひとつが、新しいプラスチック、バイオマスプラスチックです。

リサイクルが難しい化石資源由来のプラスチックに対し、バイオマスプラスチックは植物などの再生可能な有機資源を原料とするため、生分解性の特性を持つものがあり、プラスチックの概念を覆すものになっています。バイオマスプラスチックを活用した新たな製品開発、イノベーション促進がますます求められる世の中になるでしょう。

当メディアでは、バイオマスプラスチックを早くから導入し、プラスチックのアップリサイクルにも取り組んでいるプラスチック加工機器メーカーのシーティーイーに取材をしています。

バイオマスプラスチックとは?

日本のプラスチックのリサイクルの現状

プラスチック廃棄量は世界的に見て少なめ、ただし…

前述しました通り、日本はプラスチックゴミの排出量自体は、世界的に見ても実は少ない方であるというのは、意外な事実ではないでしょうか。

一方で、これまたご紹介しました通り、日本のプラスチックリサイクルは実に6割から7割がサーマルリサイクルであるという点も、見逃せない事実と言えます。もちろん、サーマルリサイクル自体も廃棄物を有効活用するためのひとつの方法ではあります。しかし、これまた昨今盛んに叫ばれている二酸化炭素の排出削減とは逆の方向性であるということは否めません。

繰り返しになりますが、そもそもサーマルリサイクルという行為は、欧米ではリサイクルとは見なされていないという現実もあり、この点は今後、真摯に改善に取り組む必要があります。

プラスチックのリユースやリサイクルが進まない原因

そもそも、なぜ日本ではサーマルリサイクルがメインなのでしょうか。単刀直入にいうと、コストと手間がかかり過ぎるためというのが大きな理由になります。

改めて申し上げるまでもなく、廃プラスチックを原料に製品を生産するには、廃プラスチックを回収して、ひとつひとつ種類ごとに間違いなく選別し、洗浄や粉砕化などを行って、原料として利用できる状態に再生しなければなりません。わざわざそんな手間暇と時間をかけるよりも、新品の材料を仕入れて生産したほうが、はるかに効率的でコスト的にも安上がりだからという、事実があります。

もうひとつ、再生プラスチックを利用すると、品質の維持が難しいというのも見逃せないポイント。プラスチックにはいくつもの種類があり、同じ種類でリサイクルしないと品質が劣化してしまうのです。回収の際、分別、分類を徹底したとしても、100%を実現するのはなかなかに困難です。

中国を筆頭に、各国がプラスチックごみの輸入を禁止

あまり知られていませんが、実は日本のプラスチックごみは、安価な再生素材として中国や東南アジアなどに輸出されていました。しかし、環境負荷の増大やリサイクルコストの上昇などによって、中国が2018年1月より、プラスチックごみの輸入禁止に踏み切り、東南アジア各国もこの動きに追随。日本の廃プラスチック処理は、大きな岐路を迎えました。一説には、レジ袋有料化は、このことが原因のひとつともされています。

今のところ、諸外国の輸入禁止の影響で、日本国内で廃プラスチック類の大規模な不法投棄などが起きたといったことは確認されていないとされています。しかし一部地域では、保管基準違反が発生したり、一部の処理業者が受入制限を実施したといった事態は起きています。今後、廃プラスチック類の適正処理に支障が生じたり、不適正処理事案が発生するのではないかといった懸念が高まっています。

日本のプラスチックリサイクル問題に対する取り組み

日本はこれまで述べてきたような問題点を抱えているものの、もちろんそのまま手をこまねいている訳ではありません。2022年4月から「プラスチック資源循環促進法」が施行されました。

簡単に言えば、単にプラスチックの生産を規制するのではなく、プラスチック製品の設計から販売、回収、リサイクルまでの一連の流れのなかで、事業者、自治体、消費者が連携し地球に優しい循環型経済の実現を目指すというもの。

事業者には再使用可能な部品を使用や代替製品への切り替え、提供方法の見直しなどに務め、自治体はプラスチック使用製品廃棄物の分別基準の設定や廃棄物を利用しての再商品化や、再商品化計画を作成。

我々消費者には環境に優しいプラスチック製品を選ぶ、プラスチックを過剰に使用しないよう心掛ける、プラスチック製品の分別・回収・リサイクルに協力することが求められます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?日本におけるプラスチックリサイクルの実情は、上記の通り、決して充実しているとは言い難いのが実情になります。とりわけ、リサイクルの大部分がサーマルリサイクルであることや、これまで製造者がリサイクルに消極的な理由などは、ご存知なかった方も多いことでしょう。かといって、プラスチック製品を我々の生活から全て排除せよというのは難しい現状です

大切なのはナフサ由来のプラスチックをいたずらに排除するのではなく、現状をしっかり理解した上で、どのような対応を行っていくべきなのかということです。

今後も再生プラスチック、バイオプラスチックの活用や、リサイクル体制の強化といったことが望まれます。プラスチックと共存していく方法を模索しながら、地球に優しい環境をいかに実現していくかが、今後、行っていかなければならないことに他なりません。

【プロの目で読み解く】リサイクルを企業はどう考えていくべきか?

取材協力
なにが地球にとって正しく、優しいことかをしっかり考え企業活動を行っていく
株式会社CTE
CTE
伊藤勝人

サーマルリサイクルを除いたリサイクルをこれから日本は力を入れていく必要があると考えています(サーマルリサイクルが絶対にいけないというわけではありません)。日本がこれから向かっていかないといけないのは生産量を減らし脱プラスチックを目指すのではなく、アップサイクルやサステナブルに使える循環型にもっと力を入れていくべきでしょう。

そのなかでバイオマスや生分解性樹脂というのは人類の循環(分子レベルまでの分解により自然にかえる)という点で、サステナブルな社会につながると考えます。本質的になにが地球にとって正しく、優しいことかをしっかり考え企業活動を行っていくことが必要だと思います。