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マテリアルリサイクルとは

マテリアルリサイクルとは

ダウンマテリアルリサイクルの図 レベルマテリアルの図 アップサイクルの図

マテリアルリサイクルとは、廃棄物を同じ製品の原料に再び活用する仕組みを指します。「水平リサイクル」などとも呼ばれていますが、なぜそこまで注目されているのでしょうか?

それは、もとの製品と同等の品質や機能を保つ必要があるため、高度な回収・洗浄・選別技術が欠かせないからです。特に食品関連の場合には衛生基準がさらに厳しく、こうした複雑な課題をクリアする必要があります。

その結果、マテリアルリサイクルの実現は思いのほかハードルが高いのが現状です。

実際には、廃棄物をまったく同じ用途で再利用するケースよりも、性質を一段階下げて別の製品原料に活用する「ダウンマテリアルリサイクル」のほうが多く見られます。

では、なぜわざわざレベルを下げるのでしょうか。それは品質基準をやや低く設定できるため、リサイクルの手間やコストが抑えられるメリットがあるからです。こうした現状を踏まえながら、私たちは水平マテリアルリサイクルの普及に向けて、どのような仕組みが求められるのかを見ていく必要があります。

2022年の有効利用された廃プラスチックの内、マテリアルリサイクルされた割合は23%に留まっております。

そのうち67%はリサイクル後にタイやマレーシア、ベトナムなどの海外に輸出されております。

一般社団法人 プラスチック循環利用協会(https://www.pwmi.or.jp/column/column-2358/

2022年日本のプラスチックリサイクルにおける内訳の図

ダウンマテリアルリサイクル

ダウンマテリアルリサイクルは、品質や機能を同等に保つのが難しい場合、一段低いグレードの製品の原料として利用する方法を指します。

英語で「段々に落ちる滝」を意味する「Cascade」を用いて「カスケードリサイクル」と呼ばれることもあります。

水平マテリアルリサイクルほどの厳しい基準をクリアする必要はないため、リサイクル工程を簡略化しやすいのが利点です。もっとも、資源を循環させるという観点では非常に重要な役割を担っており、将来的には技術進歩とあわせてさらなる効率化や高付加価値化が期待されています。

マテリアルリサイクルのメリット

廃棄されたプラスチックを新しい製品の原料として再利用するマテリアルリサイクルは、環境対策と経済効率の両面で大きな意義を持っています。

私たちの社会はプラスチックによる便利さを享受してきましたが、その一方で使い捨ての習慣によって膨大な廃棄物を生み出しているのも事実です。

こうした問題を解決する手立ての一つとして注目されているのが、このマテリアルリサイクルです。

CO2排出量の削減

最も大きなメリットとして挙げられるのが、CO2の排出量を減らす効果です。

新たにプラスチックを作る場合には、原油の採掘から精製、樹脂の製造といった複数の工程で大量のエネルギーを必要とします。

これらの過程で排出されるCO2は無視できないレベルですが、すでに存在している廃プラスチックを再利用すれば、その分の排出量を大幅に抑制できます。具体的な試算として、1トンのプラスチックをマテリアルリサイクルすると、バージン材(新規原料)を用いた製造と比べて、約1.6~2.0トンものCO2排出量を削減できると報告されています。

これは企業にとってもコスト削減と環境貢献を同時に実現する可能性があり、持続的な生産体制を築くうえで強力な後押しとなるでしょう。

情報参照元:公益財団法人 日本容器包装リサイクル協会(https://www.jcpra.or.jp/recycle/pla_survey_data/tabid/435/index.php

天然資源の消費を抑制できる

もう一つ見逃せないのが、有限な資源を節約できるという点です。

プラスチックの主原料である原油は、世界的に需要が高まり続ける一方で、埋蔵量には限りがあります。そこで、すでに使われているプラスチックを再度原料として取り入れることで、新規の資源採掘を最低限にとどめることが可能になります。

こうした取り組みが広がれば、資源価格の変動リスクを抑え、国内で安定的な供給体制を確保するうえでも大きなメリットをもたらします。さらに、廃棄物として扱われていたプラスチックが「使える資源」として認識されるようになると、産業界全体での循環型ビジネスモデルが加速し、結果的に環境負荷の軽減と経済活性化の両立にもつながることが期待されます。

マテリアルリサイクルの具体例

プラスチックにおけるマテリアルリサイクルでもっとも知られているのはペットボトルです。ごみとして廃棄されたペットボトルを新たなペットボトルに再利用するレベルマテリアルリサイクルのほか、衣類や食品トレーなど他の製品に再利用するダウンマテリアルリサイクルなどが有名です。ほかにも卵パックやラミネート包材、洗剤容器などといったプラスチックもマテリアルリサイクルにおける具体例として挙げられます。プラスチックのマテリアルリサイクルを実現するには、回収されたプラスチックを洗浄し異物を取り除くことが必要になりますので、その一連の流れをいかに仕組み化できるかが非常に重要なのです。

マテリアルリサイクルの課題

技術と設備の確立

現在、日本ではマテリアルリサイクルの施設が十分に整備されておらず、現状の技術や設備を前提とすると、すべてのプラスチックをマテリアルリサイクルできるわけではありません。例えばドレッシングのように油を含む食品容器やソース・焼肉のたれのように香辛料の香りが強い食品容器の場合、洗浄や分別に大変な手間がかかる事から、思ったようにリサイクルを進められません。このような技術・設備的な課題を解決することができると、幅広いプラスチック製品のマテリアルリサイクルを進められるようになるでしょう。

品質の劣化を防止する

廃棄されたペットボトルを新たなペットボトルとして再利用するレベルマテリアルリサイクルは、何度も熱を加えることでプラスチックの分子が切れ、品質の劣化が発生してしまいます。また、アルミや木くず、銅粉など異物の混入などでも必要な品質を維持することができなくなるためダウンマテリアルリサイクルにしか使えなくなってしまいます。再利用製品の品質をどこまで担保できるかもマテリアルリサイクルにおける課題の一つとなっています。

コストを抑える

マテリアルリサイクルは廃棄物を回収したあと分別や洗浄などのプロセスが必要になります。多くの作業が入ればその分だけ人件費やその他経費がかさんでしまいますので、これらのコストをどれだけ抑えられるかも非常に大きな課題の一つになります。

プラスチックを加工・製造する事業者を対象に行われた調査(※)では、
約8割の事業者が、バージン材より安いなら使用したいと回答

価格帯が同じであれば、再生樹脂の利用を「検討する」と回答した事業者は33%にとどまりました。

再生材のコストが、その利用を促進するための重要な要素であることを物語っています。

※参照元URL:『プラスチックのリサイクルに関する研究報告書』(福岡アジア都市研究所)(https://urc.or.jp/wp-content/uploads/2023/04/202303plastic_recycle.pdf

マテリアルリサイクルで必要なコスト

  • 分別や選別の手間
  • 洗浄コスト
  • 再加工コスト
  • 人件費
  • 設備投資
  • 設備維持費
  • エネルギーコスト
  • バージン原料混合コスト

まとめ

マテリアルリサイクルにはさまざまな課題がありますが、解決してより多くの廃棄物のリサイクルに取り組むことができれば地球環境に大きく貢献することができるでしょう。日本は高いリサイクル率を誇っているというデータもありますが、このリサイクルの中にはプラスチックごみを燃やして得られる熱エネルギーを回収するリサイクルを示す「サーマルリサイクル」が含まれています。欧米基準ではこのサーマルリサイクルはリサイクルに含まれませんので、これを考慮すると日本のリサイクル率は世界諸国に比べて大きく後れを取っています。一人一人が正しくリサイクルを学び・理解することができれば、日本も地球環境に大きく貢献する世界を作っていくことができるのではないでしょうか。

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