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プラスチックリサイクルの油化とは

目次

油化とは

油化とは、使用済みプラスチックを高温で分解し、再利用可能な油を生成する技術です。

プラスチックを酸素のない環境で熱分解し、ナフサや他の化学原料を生成します。

このプロセスでは、プラスチックの炭化水素成分が分解され、「ナフサクラッキング」という工程を経て、エチレンやプロピレンといった基本的な化学物質に変わります。

ナフサクラッキングとは、ナフサ(石油から得られる軽油の一種)を高温で分解して、エチレンやプロピレンといったより小さな分子に変える工程です。

この分子は、さらにポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)という新しいプラスチック製品の原料となります。

ポリエチレンは食品包装やプラスチック袋、ボトルキャップなどに使用され、ポリプロピレンは自動車部品や家庭用プラスチック容器、繊維製品などに利用されています。

このように、油化技術は使用済みプラスチックを効率的にリサイクルし、新たなプラスチック製品として再利用するための重要な技術です。

油化のメリット

油化には他のケミカルリサイクルと比較していくつかのメリットがあります。

  • 汚染・混合廃プラスチックも処理でき、リサイクル効率が高い。
  • 他の方法と比べて、より広範なプラスチックを処理可能。
  • ナフサなどを生成し、新たなプラスチック製品の原料に再利用できる。
  • 高品質な油を生成し、効率的なリサイクルが実現。
  • 二酸化炭素排出や廃棄物の埋め立てを削減し、環境負荷を低減。

油化は使用済みプラスチックから再利用可能な油を生成するため、リサイクルの幅広い用途に対応できることが挙げられます。

油化はさまざまな種類の廃プラスチックを処理できるという点で優れています。特に、混合廃プラスチックや汚染されたプラスチックでも処理が可能であるため、リサイクルの効率性が向上します。

他のケミカルリサイクル方法、例えば解重合法は特定のプラスチックに限定される場合が多く、処理の範囲が狭いことが課題となります。

次に、油化技術は生成されたナフサや他の化学原料を多様な用途に再利用できる点で有利です。

例えば、ナフサから生成されるエチレンやプロピレンは、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といった新しいプラスチック製品の原料となります。

また、油化技術の進展により、従来の高温分解法に比べて高品質で不純物の少ない油を生成することが可能となり、より効率的なリサイクルが実現されています。

環境エネルギー株式会社と出光興産が開発した触媒接触分解方式は、プラントの清掃やメンテナンスの手間を減少させ、連続稼働を可能にしています。

油化は環境負荷の低減にも寄与します。焼却処理に比べて二酸化炭素の排出量を削減し、廃棄物の埋め立てを減少させることで、環境への悪影響を最小限に抑えることができます。

油化の課題

  • ナフサ収率の低さと効率の悪さ。
  • リサイクル工程が複雑で時間がかかる。
  • 高温維持に大量のエネルギーが必要で、コストが高い。
  • 廃プラスチックの安定供給が困難。
  • 二酸化炭素排出や副産物の処理による環境負荷も問題。

油化にはいくつかの課題があります。まず、油化技術の効率性が十分でないことが挙げられます。

熱分解によって得られるナフサの収率が低いため、再利用できる油の量が限られています。

油化のリサイクル工程は複雑であり、解重合法などの他のリサイクル方法に比べると効率が劣ります。油化はプラスチックを熱分解し、その後にナフサクラッキングを行い、最終的に新しいプラスチックを生成するという三段階のプロセスを経るため、手間と時間がかかります。

コストとエネルギー消費の高さも課題です。油化には高温を維持するための大量のエネルギーが必要であり、それに伴う運用コストも高くなります。経済的に持続可能なリサイクル方法としての導入が難しい場合があります。

廃プラスチックの安定供給も重要な課題です。使用済みプラスチックの安定的な供給が確保できなければ、油化プラントの運用が困難になります。

特に、廃プラスチックの輸入規制などがある場合には、国内での供給体制を整える必要があります。

環境負荷の観点からも課題があります。油化は他のリサイクル方法に比べて二酸化炭素の排出量が少ないものの、それでもなお一定量の排出が避けられません。さらに、熱分解の際に生じる副産物や不純物の処理も環境への影響を考慮する必要があります。

油化の事例

環境エネルギー株式会社と出光興産の事例

環境エネルギー株式会社と出光興産は、使用済みプラスチックを効率的に再利用する「触媒接触分解方式」を開発しました。この技術は、従来の高温分解法よりも低温で処理でき、高品質な油を生成します。

触媒を使うことで分解反応を促進し、エネルギー消費を抑えながら、不純物の少ない油が得られます。また、異物の排出が容易で、プラントの連続稼働が可能になり、メンテナンスも簡単で運用コストの削減にもつながっています。さらに、安全性も向上しています。

この技術は、他の油化技術よりも効率的で環境への負荷が少ないリサイクル方法として注目されています。

参照元:出光公式サイト(https://www.idemitsu.com/jp/news/2023/230420.html)

油化の歴史

油化技術は1970年代のオイルショックをきっかけに注目されました。当時、石油価格が急騰し、代替エネルギー源として使用済みプラスチックから油を得る方法が検討され始めました。しかし、この時点では技術的な課題が多く、広く普及するには至りませんでした。

2000年代に入ると、油化技術の開発が本格化しますが、特にコストや安全性の面での課題がボトルネックとなり、技術の進展が求められていました。

2017年、中国をはじめとする周辺諸国が廃プラスチックの輸入を規制したことで、国内での廃プラスチック処理が急務となりました。

この背景から、国内での油化技術の需要が高まりました。

油化技術は、環境保護と資源の有効活用を目指したリサイクルの重要な手段として、今後もさらなる発展が期待されています。

まとめ

油化技術は、使用済みプラスチックを高温で分解し、再利用可能な油を生成する重要なリサイクル技術です。これは、1970年代のオイルショックを契機に注目され、2000年代に本格的な開発が進められました。

特に、環境エネルギー株式会社と出光興産が開発した「触媒接触分解方式」は、従来の方法と比べて高品質な油を効率的に生成することが可能となり、技術的な進展が見られました。

油化技術のメリットには、さまざまな種類の廃プラスチックを処理できること、生成されたナフサなどの化学原料を多様な用途に再利用できること、そして環境負荷の低減があります。しかし、一方で、効率性の向上、コストやエネルギー消費の削減、廃プラスチックの安定供給といった課題も存在しています。

これらの課題を克服するためには、技術的・経済的な解決策が求められており、油化技術のさらなる発展が期待されています。環境エネルギー株式会社と出光興産の事例は、その一例として、油化技術の可能性を広げる重要な進展を示しています。

このように、油化技術は廃プラスチックの効率的なリサイクルと環境保護に大きく貢献するものであり、今後の技術革新により、より持続可能な社会の実現に寄与することが期待されています。

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